コードバンの長財布が似合う男

年は42歳。

私が知っているこの男性客の情報はそれだけだ。

私のバーには以前からの常連客に連れてこられてから
ちょくちょく1人で来店する事が多くなった、
いわゆるよくあるパターンの客だ。

来店時はいつもスーツ、
仕事内容は分からないが、部下や上司と来ることも無く、
時間も20時から21時に間の事を考えると
二次会には行かずにここに来ているのだろう。

見た目の印象としては年齢相応に見え、
来ているスーツも安っぽくは無い、
しかしブランドのスーツかと言えばそうでもなく、
おそらくオーダーのスーツだろう。

着ているワイシャツの袖にはカフスボタンを使っている事から、
仕事場ではそれなりの役職に付いていると想像でき、
課長か部長と行った所か。

履いている靴の底も総革で、
ライターもジッポーをコレクションしている様でいつも違う、
こう言った小物にもこだわりがあるのだろう。

家庭があるのかどうかはまだわからない。

ーーー私がこの男性から受ける印象はこんな所だ。

この男性はいつもお会計の時、
スーツの内ポケットからコードバンの長財布を取り出し、
そこからクレジットカードを取り出す。
内装のヌメ革の経年変化を見ても、
1~2年の物ではなく、使い込まれている印象だ。

今回はこの男性のコードバンの長財布を話題にしてみる事にする。

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「失礼ですが、貴方がお持ちの長財布はコードバンではありませんか?」

「!?わかりますか?もう長く使っているんです」

そう言って内ポケットからコードバンの長財布を取り出した。

「すばらしい光沢ですね。大事にされているのが分かりますよ」

「私が課長に昇格した時に自分への褒美として買った思い出の長財布です。
使い勝手も良くて、内ポケットに入れても厚くならないから気に入っているんです。
当時はいろんな財布を見て回ったんですが、最初の印象が良くて。」

「良い買い物をしましたね。スーツから取り出すコードバンは
とてもスマートでとてもお似合いです。」

「ありがとう、始めて財布を褒められたけど、嬉しいよ。
でもね、この財布にも弱みがあって、小銭入れが無いんだ。
お陰でズボンのポケットはいつも小銭だらけだよ。」

「そうですね。小銭入れ無しのコードバン長財布は
スッキリしていて厚みが無い分内ポケットに入れられますが。
小銭がネックになるんですよね。
それならば小銭入れを別に持つ事を考えられては?」

「小銭入れか~確かに持っていると便利かもしれないね。」

「スーツを着ている時はコードバン長財布は映えますが
普段着で持つにしてはちょっと豪華すぎますから。
仕事以外では別の財布を使うのもいいですが、
せっかくすばらしいコードバン長財布をもってらっしゃるので
コードバンの小銭入れをそろえるとさらに長財布にも
愛着がわくというものですよ。」

「なるほどね。コードバンの小銭入れを検討してみるよ。
いざ買う時は相談にのってもらえるかな?」

「もちろんです。貴方にお似合いの小銭入れを紹介しますよ。」

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その後彼はコードバンの馬蹄型の小銭入れと
名刺入れの2つを購入した。

この2つを揃える事でコードバンへのこだわりが一層強くなり
次はコードバンの靴を考えてると言う事だった。

コードバンの長財布を最も美しくスマート、
それでいて高級感を十分に引き出すには、
やはりスーツから取り出す瞬間が最高と言える。

しかし実用性を考えると仕事以外では
使い勝手があまり良くないのも確かです。
そこで普段使いの財布を別に用意するのも良いですが、
せっかくコードバンの長財布を持っているのですから、
コードバンで小銭入れを合わせるのが最高の組み合わせです。

コードバン自体に愛着を持つ事で、
自分が本当に納得いく満足出来る財布へと変化するのです。



第二話 意外な自分

第三話 私が悪いの

第四話 もう一度だけ

最終話 回り道の末

特別編 彼女からのプレゼント



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