とある常連客の夫婦の思い出の長財布

長財布コレクターの私にその思い出を語ってくれた

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もうかれこれ20年使っている長財布なんだ
家内が誕生日プレゼントに買ってくれたものなんだよ。

そういって彼は私にその長財布を見せてくれた。
ブランド品では無いが、高級なコードバンを使っているのは
一目瞭然の長財布だった。

流石に20年使っていたとなれば、
それなりに傷やシミなどが出来ている。
皮革に詳しくない人が見ると、ただの使い古した長財布に見えるだろう。

初めて付けてしまった傷はこれ、
忘れもしない16年前の6月23日、
息子が産まれた日なんだ。

そう言って見せてくれたのは表面についた一番大きな傷だった。

これはね、子供が生まれた日に急いで病院に行った時、
階段でつまずいて転んでしまったんだよ。
幸い私に怪我はなかったが、
この長財布に傷がついてしまったんだ。

いわば私の変わりに傷ついてしまったというわけだね。

知らない人から見るとただの傷ではあるが、
本人にとってみれば思い出の傷となっている。

この傷を見るたびに子供が生まれた事を思い出す。

長く使えるものを長く使っていると
こう言った思い出がいくつも出来てくるものだ。

これが皮革製品を使う醍醐味といえるだろう